ブログ 2012/01/12

田井中さん

電通の元専務であった田井中さんのお通夜で、京都に行った。
とても多くの方々が参列されており、改めて、その人徳を感じた。
       
私が電通を辞め、オグルヴィに移ってから、
田井中さんには何度か「電通に戻ってくるように」と声を掛けて頂いた。
                    
1年3ヶ月前、独立することが決まってからは、
電通での講演会を開催して頂いた。
            
「これで電通とも仕事ができるようになるな」
      
継続クライアントを何も持たずに独立し、
不安だらけの私にとっては、とても有り難く、心強い言葉であり、
事実、その後、電通からも仕事がきた。
              
お祝いにと、高級寿司屋に連れて行ってくださった。
事務所開きの日に、ビンテージのドンペリを個人名で贈ってくださった。
        
私だけでなく、田井中さんに「見られている」
と感じていた現役クリエイティブの人は多いはずだ。
          
自分の仕事を「見られている」ことは、安心感を生む。
同時に、「恥ずかしいことをしたくない」という緊張感、
困難と戦う勇気を生む。
             
「見守る」
     
先輩が後輩へできる最高の指導だ。
        
田井中さんからは、説教臭いことを言われた記憶はない。
でも、心に残ることは何度か言われた。
それらを、田井中さんの志を、ひとつでも受け継ぎたい。
       
田井中さん、心より御礼を申し上げます。
ゆっくりとお休みください。 
         
でも、天国で、後輩の仕事を見守っていてください。

ブログ 2011/12/23

少年

弊社17の入っているビルの一階には公文式の教室が入っており、
多くの小学生と保護者が出入りしている。
  
昨日の夕方、荷物を抱えて出張から戻って来た。
      
ちょうど、授業を終えた公文式のたくさんの子ども達が
手動式の扉を開けて出てきた。
  
出入口では出る人が優先なので、
次々と出て行く子ども達を扉の前で見ながら待っていた。

すると、一人の身体の小さな少年が全身で扉を押さえ、
「お先にどうぞ」と私にサインをした。
少年の気の利く、いや、思いやりのある行動に動揺した私は、
彼の頭上で扉を押さえ、「ありがとう。どうぞ」と、彼の先の退出を促した。
  
しかし、彼は無言のまま、「お先にどうぞ」を繰り返し、
先に出る気配がまったくない。
  
小学生にして、既にジェントルマン。
 
彼が扉を開けてくれている間に4名の小学生が、
彼に一言もかけず、そのまま出て行った。
       
「ありがとう。キミは優しいね。お先にどうぞ」と再び声を掛けた。
しかし、彼は無言のまま、「お先にどうぞ」を繰り返す。
      
品川駅でのオジさん(たぶんズラ)とオジさん(自毛)の綱引きを見た後だったので、
少年の「相手を思いやる心」に深く胸を打たれた。
          
号泣しながら、「ありがとう」と言い、先にビルに入れてもらった。
                
少年は、キラキラと光る満面の笑顔を見せた。

と書きたいところだが、  
少年は「当たり前だよ」と言わんばかりに、
無言で頷き、私と入れ違いに外へと出て行った。
   
明日の夜、
サンタさんが少年に素敵なプレゼントを持って来てくれることを
心から願っている。