ブログ 2011/09/07

寿司

わずか十数年前、アメリカ西岸や一部のスノッブたちを除き、
寿司を食べることは、
世界では「生で魚を食べる蛮行」とされていた。
  
ところが、
この数年で寿司は世界で最もクールな食事になった。
築地市場で一番高値で取引された魚が
日本ではない国の寿司屋で食べられる時代が来た。

寿司が変わったのではない。
世界の方が変わったのだ。

目の前のお客さんの舌を唸らせようと、
師匠の技を盗みながら、自分の味を打ち出そうと
腕を磨いてきた日本の寿司職人。   
 
一人の心を動かせるならば、世界は変えられる。
  
多くの人を喜ばせようとして、
誰一人も、自分をも喜ばせられないことがある。
それは「知りもしない多くの人」に合わせに行ってしまうからだ。

広告クリエイティブの仕事がはらむ危険性だ。            

多くの人なんて存在しない。
  
自分の経験と感性が判断することと、
目の前の人の素直な反応がすべてだ。
   
それこそが、統計データに勝る生データではないか。
          
とある仕事で、クライアントの英断があった。
生データを信じて頂いたからだと思う。
  
こういう仕事は、きっと成功する。
成功させないといけない。
     
17の夏は、まだ終わっていない。

ブログ 2011/09/06

夏の想い出 その2

ビショ濡れのジャガー(前回のブログ参照)を横目に
親切な方のクルマに乗り込み、深夜の高速で送って頂いた。
    
道中、四方山話しで盛り上がっている時、
けたたましくサイレンを鳴らすパトカーが後ろに現れた。
  
(おっ、事件か!?)
  
「路側帯に寄ってくださ~い!」

えっ?

「路側帯に寄って!」
  
スピード違反で捕まってしまった。

小太りのポリスが近寄って来て、   
「37Kmオーバーです。
 あと3Kmで免停でしたよ。よかったですね~」  
とサラッと言う。
       
親切な方は、パトカーの中に連行され、取り調べを受けはじめた。

我々の横を明らかに40Kmオーバーのクルマ達が
自分たちの幸運を喜びながら追い抜いて行く。
 
親切な方に申し訳ない気持ちと、
他人の不幸を連続して目撃したおかしさが入り交じり、
思わず、助手席でクックックと笑ってしまった…。
 
その時、タイミングよく、
明朝の撮影現場への入り時間の変更の知らせで
制作スタッフから電話があった。

状況を説明すると、
彼は遠慮なくゲラゲラと腹を抱えて笑った。
     
やはり、他人の不幸は蜜の味だ。
 
しばらくして、親切な方が戻って来た。
「罰金3万5千円だってさ…」
高速道の水銀灯に照らされた横顔は、
悲しげでもあり、
話しのネタを見つけた芸人のように嬉々ともしていた。    
   
        
夏は、忘れられない想い出を残す。 

ブログ 2011/07/27

日向と日陰と会話

オフィスには、独立のお祝いに頂いた
多くの観葉植物が元気に生きている。
     
とあるお偉いさんに頂いたパキラは
尋常ではなく伸びる。
「キミは竹かっ!」
とツッコミを入れるくらい伸びる。
若い会社には縁起が良い。
ありがたい。
      
フランスゴムの木は
もともと丈夫なくせに、
放って置くとすぐに拗ねて葉を撒き散らす。   
忘れている大切な人のことを
思い出させてくれる。
ありがたい。  
       
植物は皆、自分らしく生きている。
感傷的な気分で書いているのではない。
少なくとも17にいる植物たちは個性がある。
   
    
日頃の手入れは自分でしているものの、
問題が発生した時の対処が分からず、
定期的に花屋さんに来てもらっている。        
 
時々、花屋さんは
植物たちを診断して、場所を移す。
    
昨日は、2つを除き、全部の場所を変えた。
  
窓から離れて置かれたものたちは
太陽を求めて、窓側に偏って成長する。
 
窓際に置かれたものたちは
陽に当たりすぎて弱ってくるものもいる。
 
人生みたいだ。  
誰もが陽のあたる場所を目指すけれど、   
日陰にいる時期も必要なんだ。
 
      
扉を入ってすぐの会社のロゴのところには
いつもは1つの鉢しか置かないのに、
今回は3つの鉢がいびつな三角関係に置かれた。
 
「どうして一直線じゃないのですか?
 真っ直ぐの方が美しいじゃないですか」
 
という抗議めいた問いに、花屋さんは即答。
   
「植物たちがお互いの顔を見ながら会話するためです」
     
会って話しをするから「会話」。
   
大切な人の顔を見に行って、
目を見て、話をしたい。
元気に生きるために。 
いい仕事をするために。