少し前のこと、福岡にたった2時間30分しか滞在できない出張がありました。入稿直前のビル看板の現地確認がどうしても必要で、帰りの便のチェックイン時間を考えると、空港に着いてから実質2時間しか動けない。福岡空港に着陸すると同時に、ゲートから出口へ向かう通路をほぼ小走りで進みました。出口で、同じくらいの速さで空港の中に入ってくる人とすれ違いました。
ボストンバッグを提げ、サングラスをかけた背の高い男性。元ソフトバンクホークスのエース、和田毅さんでした。現役時代と変わらない、スッと引き締まった体型。そのままスッと空港の中へ消えていきました。「今夜は東京で解説の仕事があるから急いでいるのかな」と思いながら、私は現地へ飛んで行きました。
現地は、事前に見ていた写真とはかなり違っていました。長期間掲出する媒体に対して、ベストなデザインを提案できる自信が持て、来た甲斐があったと思いながら、すぐに取って返して福岡空港へ。チェックインにギリギリ間に合い、安堵の息を吐いた時——目の前に、見覚えのある人物がいました。和田毅さんです。同じ便に搭乗しています。
えっ!?国内線で、こんなに早く空港に来る人がいるんだ……と、かなり驚きました。私自身は国内移動で40分以上前に空港に着いた記憶がないので、余計に衝撃的でした。しかし、和田さんはなぜ、こんなに早く来る必要があったのか。いろいろ考えてみました。
空港で打ち合わせがあったのか?
空港でゆっくりご飯を食べたかったのか?
それとも、ただ単に「移動する時はいつも2時間半前行動」を徹底している人なのか?
その夜、和田さんは確かに東京でプロ野球中継の解説をしていました。
結局、本当の理由はわかりませんでした。
ただ、2時間30分という滞在時間で汗だくになりながら小走りで動き回っていた自分とは対照的に、ゆったりとした立ち姿で全身から余裕を漂わせるエースの風格だった和田さん。その圧倒的な余裕の差に笑ってしまいました。


