「おまえが松尾か。
おまえ、ラグビーやってたんだってな」
「はい」
「この土曜、一緒にタッチフットボールをやらないか?」
「タッチフットって、ラグビーのですか?」
「うん。まぁ、似たようなもんだ」
26年前、電通の第4CD局に、
私を含む5人の新入社員が配属され、
その5名の能力開発責任者が、岡さんでした。
初めての会話から数日後、
川崎の河川敷に連れて行かれました。
私がラグビージャージに着替え終わるなり、
「走れ!」と言われて、言われるがままに走ると、
岡さんの放るボールが後らから飛んできたのです。
ビックリしました。
ラグビーでは、ボールは自分の後ろ方向にしか投げてはいけません。
前に投げると反則になります。
岡さんは思いっきりボールを前に投げていました。
それは、私が初めて見た
アメフトのタッチフットボールでした。
「騙された!」と思った時には、時すでに遅し。
それから6年間、平日、週末、合宿の練習で、
「バカヤロー!
ボールを眼で見るな!」
「バカヤロー!
まず、クオーターバックの俺を守れよ!」
理不尽に怒鳴られながら、
みっちりと鍛えられました。
そのおかげで、春と秋に横浜スタジアム、千葉マリーンスタジアムで開催されるタッチフットボール日本選手権に毎年出場し、5度の日本一を経験できました。
関東選抜選手にも選ばれるようになりました。
「それがなんだとしても、
日本一になれる経験って、なかなかできないだろ?
なによりさ、気持ちがいいだろ?」
スパイラルホールでの展示物たちを見ていて、初めて会った日のことを思い出しました。
理不尽で、理路整然で、乱暴で、強引で、優しくて、後輩想いで、女たらしで、人たらしで、冷徹で、人情にもろく、仲間想いで、家族想いで、
そんな岡さんのことが大好きだったのだと、昨日、初めて気づきました。