シューーーーーーーーーーーーーッ!
スプレーの音がしたので、その人の方を向くと、
50代の男性がワキに制汗剤をたっぷり吹きかけていた。
「あーっ! ヘアスプレーだった!」
本人が一番ビックリしたのだろう。
ハッキリと声に出して言った。
私の隣りにいたオジさんは、クシで髪を七三に整えながら、
笑いをこらえ、全身をプルプルと震わせていたが、
ついに吹き出した。
笑い終えると、「チクショー!」と言った。
笑ってはいけない日だったのだろうか…。
スプレーマンの手元には3つの缶が置いてあった。
どれも、ジムのものではない。
ヘアスプレーと制汗剤は分かったが、
もう1つの缶は何用だったのだろう?
すぐに風呂場に戻ると思ったら、
スプレーマンはロッカーに移動して、Yシャツに着替えはじめた。
その日はオールナイト、彼のワキ毛も七三だったに違いない。
このジムにはいろんなオジさんが来る。
サウナで、ミスター円と呼ばれた榊原元財務官に
経済に関することはひとつもなく、延々とくだらない質問をするオジさん。
フルチンのまま、掃除係のオバさまと立ち話するオジさん。
先日は、ロッカーでの立ち位置に関して
独自の見解を持つオジさんに叱られた。
人は、変わっているから面白い。
オジさん達は、そう言って堂々と生きている。