「今日は情報が少ないので、ゆっくりお伝えします」
「石垣島~、曇り~、 のち~、 晴れ~。
にひゃく、ななじゅ~、ヘスト パスカル。
那覇~、曇り~、のち~、晴れ~……」
さっきまで滑らかだったアナウンサーが
壊れたレコーダーのようにゆっくりと話しだした。
隣りにいた某プロデューサーも、運転手さんも
自分が耳にしたことに自信がなかったようだ。
「『今、情報が足りないから、ゆっくり伝える』って言いましたよね?」
「言いましたよね!?
長いことラジオ聴いてますが、こんなことは初めてですよ!」
視聴者のお便りをもう数枚読むとか、
アドリブでつなぐなどの手段は無かったのだろうか?
「室戸~岬~、曇~り~、の~ち~、晴~れ~……」
「うわぁーっ! さらにゆっくりになったーっ!!!」
内容は誰も聴いておらず、盛り上がる天気予報。
「そういえば、『ミリバール』ってどこ行ったんですか?
私は、ヘクトパスカルより『ミリバール』の方が好きだな」
19年前、突如我々の前から消えたミリバール。
今、キミは元気にしているのだろうか?
運転手さんだけではないぞ。
私もキミの方が好きだ。