再度の事情聴取のために出向いた警察署に着くと、
入口に近いテーブルのパイプ椅子に案内された。
聴取を担当した中年警官がこれまた横柄極まりなく、
(20年経った今日現在も言葉を交わした人の中では横柄No.1)
やる気なしの、礼儀知らずで、非常に不快な思いをした。
一刻も早く帰りたかったが、溝女のその後も気になってた。
人は、脳内出血をした時にもイビキをかく。
私の父がそうだった…。
「溝女はどうなったんですか?」
「はぁ?」
真剣に聴取していないから、言葉が通じない…。
「保護された女性です」
「あぁ…、まだ到着してな」
その言葉が終わらないうちに、突然、後方の入口が騒がしくなった。
「エッサ! エッサ!」
「エッサ! エッサ!」
「エッサ! エッサ!」
「エッサ! エッサ!」
「エッサ! エッサ!」
「エッサ! エッサ!」
「エッサ! エッサ!」
す巻きの溝女を担いだ警官隊が、祭りの神輿を担ぐ若衆のごとく、
威勢のよいかけ声と共に入ってきた。
す巻きと若衆は、そのまま一糸乱れずに方向転換し、
階段を上り、2階の奥へと消えて行った。
「アレがそう!?」
聴取のMr. 横柄が身を乗り出し、この件に初めて興味を示した。
「そう。溝女です」
「そっか~。
ねぇ、もう一回、最初から話しを聴かせてよ!」
冗談じゃない。
何度、同じことを言わせれば気が済むんだ。
我々は、Mr. 横柄の依頼をはね付け、
モスグリーン車で帰宅した。
首コルセットの中に押さえ込まれていた痛みと疲労がドッと出てきた…。
翌日の夕方、
「明日、溝女の安否の連絡をするよ」と
約束をした聴取警官からの連絡がなかったので、
その警察署へ電話した。
「個別の案件に関しては教えられません」
「いやいやいや。
連絡をするという約束だったのに、
そちらの〇〇さんが連絡をしてこないので、
目撃証言を聴取された者の責任として、安否の確認をしているのです」
「少々お待ちください…………………
……そういう記録は見つかりませんが」
「えええーっ!!!???
昨夜22時過ぎにそちらに保護された女性のことですよ。
警官が4名も出動して、我々の聴取もあるのに、記録がないわけがない!」
「いいえ。
昨夜、こちらに女性が保護されたという記録はありません」
「えええーっ!!!???」
そして、事件は意外な展開を見せはじめる。
(つづく)