ブログ 2012/03/01

雨と首コルセットと女性と 5

先週から続いている20年前の実話である。
 

グルグル巻き大作戦。

網漁と同じ要領だ。
溝女を毛布(網)へ追い込む。
行く手を遮り、全身ヌルヌルの溝女を毛布でクルクルと押さえ込む。
これならすべらない。

我々は、皆で何度もシュミレーションをした。

一番難しいのは、神出鬼没な溝女を上手に網へと起き込むことだった。
スピードと体力を要する。
網係には、羽織っていた毛布を提供したためにランニング姿になった社長と片方の警官の2名。
追い込み船係には、私たち学生2人と警官の3名が配置された。

スピード競争で何度も溝女に敗れ、
失いかけていた体育会系のプライドに火をつける必要があった。
自分が首コルセットのケガ人であることを忘れていた。

作戦を開始した。

人生には、ツキというのがある。
努力をした者のところにいつもやってくるわけではないが、
正しい努力をした者のところには、やってくる頻度は高くなるはずだ。

予期せぬ方角から溝女が現れた。

んっ?

明らかにスピードが落ちている。
それを見て、こちらのスピードは増した。
一回目から網へと追い込めた。

広げた毛布のド真中へ溝女は走り込んだ。

よしっ!

その瞬間、網係の2人が一気に毛布を巻き込んだ。
しかし、溝女は、障害物競走の網をくぐるような動きで、
毛布の下から素早く逃げて行った…。

どんな仕事にもスキルがいる。
毛布係の2人は、2回戦の前に自ら練習を申し出た。

もはや、誰が警察で、誰が社長で、誰が学生かなどは関係なかった。
我々は、チームとしてひとつだった。
川口ひろし探検隊のような熱さを胸に秘めていた。

「よし、行こうっ!」 

誰かが声を出した。

「溝女は弱ってるぞ!」 

誰かが応えた。

今なら、野生イノシシでも捕まえられると思った。

そして、ついに、その時が来た。
(つづく)